思い立ったら、逸脱...

amane92007-04-13

 昨夜飲み過ぎた。結果、本日、始動が遅れた。で、踏み外したまんまの一日へと。黒門亭の新作の会もしくは鈴本の夜の部を睨んでいたはずだったがふと、つい、電話してみた。もちろん、当日券のこと。出るらしい。しかもまだ誰も並んでないとのこと。ちょっと遠いが、またまた駄目元で行ってみるか、と行ってみた。で、えっ、いい席じゃん。




4/13 彩の国さいたま寄席 四季彩亭〜立川談春 at 彩の国さいたま芸術劇場小ホール 19:00〜



   立川談春:天災 
   立川志の吉:桃太郎
   柳家三三:不孝者
    仲入り
   立川談春:紙入れ




 いつもながら、ちょいブラックなまくらで会場をほぐしてから、実は難しい噺、とのフリを経て、天災。
力みの無い、しかし、上手くて強くて柔らかい高座。芝居っ気を排し、一見さくさくストーリーが展開する。しかし今回俺は、やっと談春落語の裏には一筋縄では行かないうねりを感じた。それまで素軽い上手い落語と思ってしまっていた。心学の先生の人間味。大所高所のお偉い先生じゃ無く状況に揺らぐ心持ち。教えに影響された八五郎の移り変わり、そして受け売り加減。また、家元が、言いよどんでいるように見えるのはその瞬間に数多の言葉が浮かんでいるのを選択しているんだ的なことをおっしゃっていたが、それを想起させる談春の言いよどみ、言い間違い。どうでもいいや、そんなこと。
 志の吉。まくらのときに楽屋が怖いんです、高座だけが安全地帯だ、と言っていたら談春が出てきたのには驚いたが。(談春ってそんなに怖いんだ?)自分でクールミントガムみたいな爽やかな落語。噛めば噛むほど味がなくなる、と。(そう、言いながらセリフを噛んでいたのに笑った)で、破綻は無い出来。
 前の二人の三三の「鰍沢」に期待して、というまくらを受けての5秒ダイジェスト鰍沢からすぐに噺へ。以前、三鷹で聞いた「不孝者」。上手さ、とさりげない品(ひん)が同居して上等な和菓子のような味わい。いいなあ、三三。やはり定期的に聞きたくなる。嫌みな感じも無いし。高座を去るところまでもろに三三だった。
 トリを飾るは、素ん晴らしい「紙入れ」。小さん・談志師匠に言及したまくらから(ひよこの話おかしかった)すーっと最初から最後までしっかりした美しい一本の絹の糸が導くようなお噺。どうしてしんさんが、女将さんに対しておくしてしまったのか?(虫の知らせだった)しんさんは貸本屋だったとか(旦那に猿飛佐助の続きを持ってくるのを忘れ続けているらしい)、悪い夢のディテイル、女将さんによる(架空の)紙入れの置き場所まで言ってしまうオーバーな旦那をある意味あざ笑う大胆さ、など上手さを通り越して鮮やか極まれり。これまた家元譲りだと思われる、途中で噺を止めての、「上手いと思ってるでしょう?師匠の真似をしているとこれくらい上手くなるんです」と照れ隠し(計算ずく?)と談志礼賛に聞こえるセリフが白眉でした。いい日逸脱...。